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【バイク】マグナキッドコピぺ 〜家族編〜【コピぺ】


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「ちょっとコンビニに行ってくるよ」

ヘルメットを抱えて、妻に言った。

「あのバイクで行くの?」

「そうだよ」  


妻は、あきれた、とでも言いそうな表情をして、台所に向き直り、夕飯の支度を続けた。

「すぐ戻ってくるから」

僕はヘルメットとグローブを持つと、ブーツを履いて家を出た。

愛車のマグナは50ccだ。

数あるマグナ中でも、気軽に乗れるところが気に入っている。

エンジンに火をいれると独特の排気音が住宅街に響く。

丁寧に暖気してから、僕はゆっくりと走り出した。



最寄のコンビニはバイクで五分もかからないだろう。

自転車でも、歩いてでも行ける距離であることはわかっている。

だけど、僕は何か理由をつけてはこのマグナに乗りたかった。

今日は日曜日だったにもかかわらず、 妻と子供の服を買うために、午前中から家族で洋服店をまわっていたため、ま
だバイクに乗っていなかったのだ。

休みの日はほんの少しの時間でもいいから、バイクに乗るようにしている。

だから、もうすぐ夕飯の時間であるにもかかわらず、五分だけでもいいからバイクに乗ることにしたのだ。



住宅街に挟まれた坂道のバス通りを走り抜けていく。

街路樹のプラタナスの葉がすっかり落ちている。 夕暮れで辺りは薄暗くなっている。

西の空が夕日で幻想的に染まっている。

反対車線を走る大きなハーレーに乗ったおじさんが手を振ってくれた。

小高い丘の住宅街を抜け、市街地へ向かうカーブで、少しだけアクセルを開けて走り抜けた。

エンジンの鼓動が僕の体に伝わってきて、胸を高ぶらせる。

左手にコンビニが見えてきた。僕はコンビニには寄らず、そのまま通り過ぎた。

線路の上を渡る高架を上りきったところで、沈もうとしている太陽の光が差し込んできた。

高架をくだり、僕はもっと見晴らしのいい場所へ向かおうと走り続けた。



しばらく、商店やガソリンスタンドなどが並ぶ通りを進んでいたが、そのまま走っていると大きな川の土手へ上がっ
た。

太陽は見えたが、半分沈んでいた。

夕日が、僕と愛車の長い影をつくっている。

僕は川の下流へ向かって、見晴らしのいい土手沿いの道を走っていた。



いつの間にか、僕は海まで来ていた。

港に愛車を停めて、ホットの缶コーヒーを飲みながら、すっかり暗くなった太平洋を見ていた。

時計を見ると、あれから一時間以上経過していた。

妻は怒っているかもしれない。

子供たちに「パパったらしょうがないね」と言いながら、僕のいないまま夕飯を食べているかもしれない。

だが僕は、まだまだこのマグナに乗っていたかった。

このままどこかへ行ってしまいたい。

北海道へ行くのもいいし、四国や九州へ行くのもいい。

そんな非現実的な想像にふけながら、僕は愛車に跨り、家族の待つ自宅へ向うため、

軽いクラッチをゆっくりとつないだ。




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[ 2014/01/04 18:03 ] 名作コピぺ | TB(0) | CM(0)
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